時計業界が直面する構造的な危機が、2026年のウォッチズ・アンド・ワンダーズ(Watches & Wonders)で浮き彫りになっています。高級時計市場は過去数年の好況から一転し、深刻な課題に直面しているとされています。
供給過剰と需要減速のジレンマ
ラグジュアリーウォッチ(高級時計)市場は、スポーツモデル(Sports Model)の生産を過度に増やしてきました。パテック・フィリップ(Patek Philippe)やオーデマ・ピゲ(Audemars Piguet)といった名門ブランドは、ステンレススティール製スポーツウォッチの需要が無限だと信じていたのです。しかし、2024年以降、投資目的で時計を購入していた層が市場から撤退し、供給過剰が深刻化しました。セカンダリーマーケット(中古市場)ではこれらのモデルが定価以下で取引されるようになり、ブランドの価値基盤が揺らいでいるとされています。
リセールバリュー危機と消費者心理の変化
かつて時計は資産価値を持つ投資商品と見なされていました。しかし現在、買取価格の下落は購買意欲を大幅に減速させています。消費者は時計本来の価値、つまり工芸性や使用体験に立ち戻る傾向を見せ始めており、ブランドはこうした変化に適応することを迫られているとされています。この市場調整は数年続く可能性があり、業界全体が構造改革を余儀なくされています。
時計業界の再生には、投機的な需要ではなく本質的な価値創造への回帰が不可欠となるでしょう。
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