クジラとペンギンが泳ぐ文字盤、アラスカをテーマにした一枚
ルイ・ヴィトンが「エスカル・アン・アラスカ」と名付けたポケットウォッチを発表した。文字盤にはクジラとペンギンが描かれており、アラスカの自然をモチーフにした世界観を一枚の時計に収めている。ポケットウォッチという形式はそれ自体が現代では珍しい選択で、ルイ・ヴィトンが展開するエスカルコレクションにとっても、このフォーマットは特別な位置づけにある。エスカルは2002年にルイ・ヴィトンが本格的なウォッチ部門を立ち上げて以降、ブランドのアイコン的なラインとして継続されてきた。
エスカルコレクションにおけるエナメル文字盤の系譜
ルイ・ヴィトンのウォッチ部門は、エスカルシリーズで繰り返しエナメル技法を用いた芸術的な文字盤を発表してきた実績がある。今回のアラスカモデルでもその流れを受け継ぎ、クジラとペンギンという具体的なモチーフをアニメーションのように生き生きと表現している点が特徴だ。この種の手描きエナメル文字盤は、製作に高度な職人技術を要する。ルイ・ヴィトンはスイスのラ・ショー=ド=フォンに時計製造拠点を持ち、そこで仕上げと組み立てが行われる体制を整えている。複雑なペイントを施したエナメルは焼成を重ねるため、一枚の文字盤に相当な時間と工程がかかる。
ポケットウォッチという選択が意味するもの
腕時計が主流の現代において、ポケットウォッチはコレクターズピースとして明確に位置づけられる。実用のために毎日使うものではなく、所有すること自体に意味を持つオブジェに近い。ルイ・ヴィトンがこのフォーマットを選ぶとき、それはトランクやバッグで培った旅と冒険のイメージと重なる。ポケットに収めて旅する、という19世紀的な時間の持ち方を、アラスカという地名と野生動物のモチーフが強く連想させる。エスカルの名称自体、フランス語で「航海」「寄港」を意味するエスカルという語に由来しており、今回のアラスカというテーマはその命名とも自然につながっている。
日本市場での見通し
ルイ・ヴィトンのエスカルシリーズにおけるエナメル文字盤モデルは、国内での流通量が極めて少なく、ブティックでの店頭確認も難しいカテゴリーに属する。二次流通市場では、エスカルのアート系モデルは状態と希少性によって数百万円台での取引が中心となっており、特に動物や自然をテーマにした文字盤は国内外のコレクターから安定した需要がある。今回のアラスカモデルはポケットウォッチという付加的な希少性も重なるため、国内二次市場での価格は通常のエスカルエナメルモデルより高い水準に落ち着く傾向がある。投資目線では、製造本数が限られるアート系エナメルウォッチは市場への放出数が少なく、長期保有に向いたカテゴリーとして国内コレクターの間で認知されている。