グランジとラグジュアリーの間で揺れるAF1の新章
ナイキがエア フォース 1にメタル素材を大胆に取り入れた新バリエーションを展開している。ヘッドラインにある「グランジ・ラグジュアリー」というキーワードが示すとおり、荒削りなロック文化の質感と高級感を同居させたアプローチで、1982年の初登場以来積み上げてきたAF1のアーカイブに、また新しい一枚が加わった格好だ。メタル素材の使い方としては、ゴールドやシルバーのドゥーブレやデコラティブなアイレットなど、ドレッシーな方向性が近年のトレンドとしてあったが、今回はグランジという言葉が指すように、より無骨でインダストリアルな仕上がりが前面に出ている。
エア フォース 1が40年以上愛される理由
エア フォース 1は、ブルース・キルゴアが設計し、バスケットボールシューズとして世に出た。ソールにナイキ エア クッショニングを初めて搭載したモデルとして知られ、1980年代のNBAコートから街へと居場所を移していった経緯がある。ニューヨーク、特にハーレムやブロンクスのストリートシーンがこのモデルを文化的に育てた歴史は広く知られている。その後もコラボレーションやカラーウェイを重ねながら定番居場所を守り続け、ハイプ文化が盛んになった2010年代以降も一線を走り続けている。シルエットそのものは40年以上ほぼ変わっていないにもかかわらず、解釈の幅を保ち続けているところがこのモデルの強みといえる。
グランジ・ラグジュアリーというアプローチの文脈
「グランジ・ラグジュアリー」はファッション業界で近年注目されているムードで、あえて傷ついたような仕上げや工業的な素材感を、上質なプロダクトに持ち込む手法を指す。メゾンやストリートブランドを問わず、この方向性が支持を集めている背景には、過剰なまでのクリーンな高級感への反動がある。ナイキがAF1でこのムードを取り込むのは、スニーカー市場におけるメタル素材の需要の高まりとも連動している。キラキラした装飾ではなく、マットな金属感や酸化したような質感を選ぶことで、コレクターとファッション層の双方に訴えかける設計になっている。
日本市場での見通し
日本国内では、エア フォース 1の特殊素材・限定バリエーションは発売直後に完売するケースが多く、ナイキ公式やSNKRS経由での入手競争は激しい。二次流通市場では、通常のカラーウェイが定価1万5000円前後であるのに対し、メタル素材や特殊加工を施した限定バリエーションは2万5000円から4万円前後で取引される傾向にある。グランジ・ラグジュアリーというムードは、現在の国内ファッション感度の高い層にはすでに浸透しており、ZOZOTOWN や各セレクトショップとのタイアップが実現した場合は入手難易度がさらに上がる。投資目線で見ると、AF1の希少バリエーションは短期的な値上がりは見込みやすい半面、長期保有での大幅なプレミアムは他の限定モデルに比べ安定しない傾向にある。コレクターとしては、着用前提か保管前提かを明確にしたうえで入手判断をすることが現実的な選択肢になる。