セイコーが大谷翔平に贈った「100万時間」の腕時計
セイコーが大谷翔平選手にビスポークウォッチを贈った。文字盤に刻まれたコンセプトは「100万時間」。野球選手としてここまで積み重ねてきた時間と、これから刻んでいく時間への敬意を込めた、セイコーらしい演出だ。セイコーは1881年に服部金太郎が東京・銀座で創業した時計商を起源とし、現在は世界有数の時計メーカーとして知られる。国産初のクオーツ時計「アストロン」を1969年に発表した歴史を持つブランドが、現代最高の野球選手にビスポーク品を手渡したという事実は、単なるプロモーション以上の意味を持つ。
「100万時間」というコンセプトが意味するもの
100万時間とは、約114年に相当する膨大な時間だ。これを文字盤のコンセプトに据えるのは、時計ブランドとして時間そのものを正面から扱う意思表示でもある。大谷選手は幼少期から積み重ねてきた練習・試合・リハビリのすべてが、今の姿を形成している。セイコーはその軌跡を「時間の蓄積」として捉え、ウォッチのデザインに落とし込んだ。セイコーのビスポーク製品は通常、グランドセイコーやクレドールといった高級ラインのノウハウを背景に製作される。既製品ではなく一点物として仕立てるその姿勢は、贈る相手の固有性を尊重するものだ。
セイコーとスポーツアンバサダーの関係
セイコーはスポーツとの結びつきが深いブランドだ。1964年の東京オリンピックでは公式計時を担当し、その精度が世界に認められた。陸上・マラソン・テニスなど多くの競技でスポーツスポンサーシップを継続してきた実績がある。大谷選手とのこのプロジェクトは、単なるエンドースメント契約とは異なり、ブランドが選手個人に向けて時計を仕立てるという形式を取っている。ビスポークウォッチは量産品とは製造プロセスが根本的に異なり、デザイン・素材・刻印に至るまで個別に設定される。そのため流通には乗らず、贈呈品としての性格が強い。
日本市場での見通し
このウォッチ自体は非売品であり、国内外の二次流通市場に出回るものではない。ただし、こうした話題がセイコー全体のブランド価値に与える影響は小さくない。国内市場では、グランドセイコーのスポーツコレクションやメカニカルハイビートシリーズが二次流通でも堅調な価格を維持している。たとえばグランドセイコーのスポーツコレクションは定価を上回る価格で取引されるケースも珍しくなく、国内外のコレクターからの需要は安定している。大谷選手とのビスポーク製作が報じられることで、セイコーブランド全体への注目度が高まり、関連モデルの市場価格が底上げされる展開は過去のコラボレーション事例でも見られた流れだ。投資目線でセイコーの限定品・特別仕様品を追いかけているコレクターにとって、このタイミングは関連モデルの動向を注視する好機といえる。